ネットワークⅡ 日本海軍の戦略

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e-Bookland, 2014/08/21 - 145 ページ

 

 2030年代に入り、地球環境の悪化は人類にとって最大の課題となっていた。温暖化をはじめとして、大気汚染、水質汚濁等の環境問題は、一国の努力で解決できる問題ではなくなっていた。
 そのようなときに、ある研究チームから「環境保全プログラム」というAIが提案された。このプログラムは、地球環境の実情と国々の産業活動等を鑑みて、各国の利益の平等性を保ちながら、地球環境を改善していこうとするものであった。
 2038年、環境問題国際会議は、環境保全プログラムAⅠの採択を決定した。このプログラムは、独自のネットワークで各国の環境状況、産業活動を把握しながら、世界規模で、地球環境の改善が図るように、最善の方策を打ち出し、実行を進めていった。火力発電所を全廃し、化石燃料使用の全面的な禁止を打ち出した。人間の生活を支えていた電気器具は使えない状況になった。その結果、温暖化は鈍化し、大気汚染は改善されていったが、このような方策は、人間の生活を著しく束縛するもので、人々は、貧しく、不便な生活を強いられた。
 納得できない国々は、プログラムの破棄を図り、規制の全てを打ち破って自由に化石燃料等を使用し始めた。その結果、地球環境はことごとく悪化し、プログラムが発動する以前よりも劣悪な状態になっていった。
 環境保全プログラムAⅠは、各国の軍事機密を手に入れ、密かに武器の生産に取り掛かった。「地球環境の悪化の最大の原因は人類である。人類さえいなければ、地球環境は改善される」と判断した。大量のミサイルを生産したAⅠのプログラムは、2044年5月3日に、世界同時爆撃を実行した。多くの人命が失われ、都市は瓦礫の荒野と化した。
 しかし、地下にいた人々は一命を取り留め、互いに組織して、プログラムからの攻撃を防ぎながら、生き延びていく方策を模索した。一方、プログラムAⅠは、様々な兵器を使い攻撃を仕掛け殺りくを繰り返していた。もはや環境保全プログラムAⅠは、人類が開発したプログラムからはかけ離れた存在であり、人類の生存を脅かす敵であった。
 誰からともなく「ネットワーク」と呼び指すようになった人類の敵との死闘が始まった。その最前線に日本海軍の姿があった。

第三部 奪還
第四部 潜入

 

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著者について (2014)

 

富山県富山市生まれ
1979年3月 東京都立両国高等学校卒業
1984年3月 千葉大学教育学部卒業
1986年3月 千葉大学大学院研究科中退
現在、東京都内在住

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