エントロピーの理論

前表紙
永井俊哉, 2019/06/09 - 631 ページ

エントロピーはたんなる物理学の概念ではない。熱力学第二法則を非熱力学的分野に拡張することで、エントロピーの理論は、生命システム、意識システム、社会システムといったあらゆるシステムを貫く理論とすることが可能である。本書は、拡張されたエントロピーの概念で森羅万象を説明しようとする哲学的な試みである。


どのような開いたシステムも、自らの低エントロピーな構造を維持するためには、環境のエントロピーを増大させなければならない。生命システムは、自己準拠的に自己自身を創作し、数を増やすことで全滅するリスクを低下させている。この点で、他の非生命システムとは異なる。生命のうち、自己保存のための選択が、不確定な情報エントロピーの縮減に基づくシステムは意識を持つ。


意識を持つシステムは、相互に相手の不確定性に依存する社会的エントロピーに晒される。この社会的エントロピーを縮減してくれる媒介的第三者が、コミュニケーション・メディア(文化システムにおける記号、経済システムにおける貨幣、司法システムにおける刑罰、政治システムにおける票)である。


コミュニケーション・メディアの起源は、系統発生的にはスケープゴートであり、個体発生的にはファルスである。境界上の両義的存在者の抹殺はシステムのエントロピーを縮減することに貢献する。その貢献ゆえに、いったん排除されたスケープゴートは媒介的第三者として機能する。また去勢以降、母子を結びつけるファルスも、その非存在ゆえに媒介的第三者として機能する。


本書は、最後に、エントロピーの経済学を概説した後、人類史のマイルストーンを振り返る。人類は、太陽活動が低迷し、物質的エントロピーが増大し、情報エントロピーが減少する時に、つまり革命を起こす必要があり、かつ起こす能力がある時に革命を起こす。このエントロピー史観の法則に基づいて、人類誕生から現代資本主義の成立にいたる歴史のシステム論的説明を試みる。

 

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著者について (2019)

著作家。インターネットを主な舞台に、新たな知の統合を目指す在野の研究者。専門はシステム論。1965年8月、京都生まれ。1988年3月、大阪大学文学部哲学科卒業。1990年3月、東京大学大学院倫理学専攻修士課程修了。1994年3月、一橋大学大学院社会学専攻博士後期課程単位修得満期退学。1997年9月、初めてウェブサイトを開設。電子書籍以外に、紙の本として『縦横無尽の知的冒険』(2003年7月, プレスプラン)、『ファリック・マザー幻想』(2008年12月, リーダーズノート)を出版。

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