美とは魂の純度の探求である他の一切のものはこれ に反する。 解るとは、解った人間の血が夜泣きをするやうな事を 言ふので、その外に解ったといふ事に意義もないので ある。 * 善は悪の対象だが、悪は善の対象では無い。悪は万物 の源動力である。 世に直観といふものは無い。直観と主張する『経験人』 がある許りだ。 対当でない相手と喧嘩はしない 世界的常識 * 糸の無いたこがブンく揚つてゐる。心棒の無いコマ が頭を振廻してみる。眼のある場所に耳が二つ並び、 耳のところに眼玉が附いてるのは、まるで馬のやうだ が、鼻の下を見れば口が縦に付いてみた。おまけに脳 みそはまる出しだ。 * 神は最善の美だだから美には係らない。不徳と美は 悪魔の双児である。 (了) た。私は文革の発端期と言ってよい一九六六 年、私も中国に行って少し老舎のことを調 アジテーションに弱い若い紅衛兵が権力争 対談の本題である高橋和巳の文学を回顧す という。『海燕』六月号の埴谷雄高・秋山 Sは、まるでない。それよりは、一般の若者 私はこの対談を読んだ後、今は四十代の全 そのことは高橋和巳と同年に生まれている そして、私の学生時代の昭和二十五年に全 蓮の盟費を上納してほしいと都内の大学を てしまったこの戦後の、つまり、なんだな、 本然の魂に惣えかける新しい文 『新潮』で、野原一夫「人間 坂口安吾」を 左翼に批判的であったということも初めて教 えられた。 戦争中に平野謙から、青年期に左翼運動か ここでまた埴谷・秋山対談に戻ると、埴谷 滞納税金をめぐって国税局と争い、競輪の みんな待ってろ。友達は夢を見てるバカなや 期の皇民化政策の時期を除いて、全体を通し っだと笑うけど、自分の道を進むだけ」 て見れば台湾文化の保護にあたっていたこと 台湾は今、大きな転換期にある。五月一日 と比べて、同じ民族による抑圧の方が厳しか に反抗することを怖れ、大陸を失った四九年 日本が去ったあと、台湾にやってきた国民ちの子供は、台湾語がまったくわからない と れが台湾語歌曲の主流となってしまった。日 の文化は瞬く間に食 本植民地教育の経験: た。台湾が台湾として生きていくための生命 これは実質的な台湾の独立宣言ではない 台湾語と北京語と日本語と英語が話せる李 たしかに台湾にしてみれば、急いで答えは 出さない方がいいのかもしれない。 (了) |