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はみずからをも感知できないということになるであろ
う。そこで、作動中の自己の範疇器官に関する一種の
超越論的統覚作用において、帝国は自意識を獲得する
という公理が認められればならないだろう。しかしそ
のことが自意識を有する地図の存在を強要し、その地
図は(万が一理解可能であれば)その時点で帝国その
ものとなり、帝国はその権力を地図に譲ろであろう。
第三派生命題。

実寸大のあらゆる帝国地図はそれ自体帝国の終焉
を裏付けるものであり、したがって、どこか帝国で
はない領土の地図なのである。

*ボルヘスの引用部分については、J. L. Borges, Turte le opere, Mondadori 1984 より訳出した

本編は、一九八二年・秋にローマで開催された「へここに獅子あり〉

架空地理学と不思議な旅」展のカタログ用に執筆されたものであ るが、今回の特集のためにエーコ自らが選び、タイトルと一部原稿の 形を変え、一九九一年度版として世界に先がけて送られてきた。単行 本未収録作品である。

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なんと言うべきかな。これは、おなじ作者の処女作にく
らべると、一気に読ませるできばえだよ。前作は、作者が
場所の一致に固執しているので展開が乏しく、しょっちゅ
う事件がおきるため、うんざりするようなしろものだった
(三回目の戦闘と十回目の闘いで、読者はようやく事の顛
末を知ったんだぜ)。またアキレウスとパトロクロスの
語が、あからさまにホモセクシュアルな脈絡にあったの
で、ローディの法務官とのごたごたを引き起こしたのは知
ってのとおりだ。ところが二作目のこの本は、びっくりす
る性どうまくいっている。文体までずっと穏やかになっ
て、ちょっと考えすぎっていうくらいよく考えてある。さ
らにモンタージュ、フラッシュ・バックの技法、物語の挿
入......。要するに、離れ業、このホメーロスはほんとうに
すごいやつだぜ。

うますぎるかもしれないな......。ぜんぶ自分で考えだし
たことなのかなあ。そうとも、そうとも、書いているうち
にうまくなるんだ(三作目が傑作でないなんてわかるやつ
がいるもんか)、でもぼくに疑いを抱かせるのは(いずれ
にせよ、それはぼくに否定的な見解を抱かせるんだが)、
著作権の面でいずれ生じる混乱なんだ。エリック・リンダ
1とそのことを話して、簡単には片づけられないことがわ
かったよ。

なによりまず、作者が見つからない。かれのことを知っ
ていた人は、テキストにほどこすべきわずかな修正につい
てかれと議論するのは一苦労だったと言う。かれは、モグ

て、すべての著作権を手に入れようとし、さらに『オデュ ッセイア』とともに『テーバイ物語』、『エビゴノイ』、『キ ュブロス物語』も買い取ってもらおうとするぞ。でも、そ の価値は別にしたところで、たいていの者は、これらの作 品はぜったいにホメーロスのものではないと言っている。 どのシリーズに入れればいいだろう。こうした奴らは今で は金に目がくらんで、そのことで頭がいっぱいになってい る。ぼくは、権威もあり、またおそらくは事柄を解明する 能力もあるサモトラケのアリタルコスに、序文を頼もうと したんだが、さらにまずいことになってしまった。かれ は、この作品の真筆の部分とそうでない部分とをすぐに決 定しようとし、その結果ぼくらは校訂版を作ることになっ てしまったんだ。きみには通俗版を送ってあげるよ。こう なったら、すべてをリッチャルディ社に任せる方が得策だ よ。二〇年かけて一万二千リラの安物を作り、銀行の頭取 たちにそれを贈呈する会社に任せる方が。

要するに、もしぼくらが冒険に身を躍らせるなら、もう 脱けだすことのできない法律上の窮地に立たされることに なるんだ。本は差し押えを受けることになるが、それは、 あとで闇取引きをさせる、あの性表現の押収のやつじゃな くて、ほんとうにただの差し押えなんだ。たとえ一〇年後 にモンダドーリ社がオスカーシリーズのためにきみからこ の本を買うにしろ、さしあたってきみが使った金は、すぐ には回収できない。 この本がすばらしいだけに残念だな。けれど、ぼくらに

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