新潮, 第 88 巻、第 7〜9 号 |
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74 ページ
時刻がきてカーキ色の国民服を着た人が正面に立ち、これから辞令を交付す仙吉
も民夫も今日から北海道の総鎮守府に出入りが自由となる。うなずき合って正面
玄関から地下一階の会議室へ向かった。二つの広い池を配した前庭を歩いて正面
...
時刻がきてカーキ色の国民服を着た人が正面に立ち、これから辞令を交付す仙吉
も民夫も今日から北海道の総鎮守府に出入りが自由となる。うなずき合って正面
玄関から地下一階の会議室へ向かった。二つの広い池を配した前庭を歩いて正面
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75 ページ
仙吉と民夫はそのあと下宿のおばさんが作ってくれた弁当を三越デパートの食堂
に持ちこんで食べ、この辞令交付場に臨んだのである。訓辞は北海海道庁の歴史
をざっと変ったあと勤労学徒の心構えを説いた。北海道庁は明治二年から十五年
...
仙吉と民夫はそのあと下宿のおばさんが作ってくれた弁当を三越デパートの食堂
に持ちこんで食べ、この辞令交付場に臨んだのである。訓辞は北海海道庁の歴史
をざっと変ったあと勤労学徒の心構えを説いた。北海道庁は明治二年から十五年
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76 ページ
仙吉はこれからは日々の感想をできるだけ詩歌にして書きつけておくため、三越
デパートで買ってきた手帳の表紙に『仙吉歌集』と書いた。色鉛筆で文字の
まわりを図案で囲んだ。下宿の六畳間には先住者がいた。梅川さんというひとだ
。
仙吉はこれからは日々の感想をできるだけ詩歌にして書きつけておくため、三越
デパートで買ってきた手帳の表紙に『仙吉歌集』と書いた。色鉛筆で文字の
まわりを図案で囲んだ。下宿の六畳間には先住者がいた。梅川さんというひとだ
。
77 ページ
洪水のようにつぎつぎと発表される所属課名は仙吉たちには何かの呪文にも
聞こえる。長官官房会計課、庶務課、管理課、文書課、地方課、拓殖計画課、
土地改良課、農政課、食糧課、馬政課、用地課、森林企画課、経済指導課、河川
課、港湾 ...
洪水のようにつぎつぎと発表される所属課名は仙吉たちには何かの呪文にも
聞こえる。長官官房会計課、庶務課、管理課、文書課、地方課、拓殖計画課、
土地改良課、農政課、食糧課、馬政課、用地課、森林企画課、経済指導課、河川
課、港湾 ...
78 ページ
仙吉たち三人はそこで庶務の伊勢主任から給仕心得を聞いた。二年生のうち
手すきの二人を立ち合わせてだった。「名前を呼ばれたらすぐはいと大きな声で
返事をする。いだ。先輩はさんづけで呼ぶこと。課員も主任以上は姓の下に役職
を ...
仙吉たち三人はそこで庶務の伊勢主任から給仕心得を聞いた。二年生のうち
手すきの二人を立ち合わせてだった。「名前を呼ばれたらすぐはいと大きな声で
返事をする。いだ。先輩はさんづけで呼ぶこと。課員も主任以上は姓の下に役職
を ...
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