ポンプとトランスポーターすべての生命活動のエネルギー源であるATPがどのように作られるかという命題に、化学浸透圧というきわめて明快な概念を与えたのがP.Mitchellであるが、この概念の背景となる分子実体が明らかになるまで、生体エネルギー論は一般にはなじみの薄い分野であった。 現在までにこれら多くの分子実体が、イオンポンプやトランスポーターとしてタンパク質および遺伝子の両面から明らかにされ、さらに、電子線解析やX線結晶学によってその構造が明らかになり、反応機構の一部が模式的に表されるようになった。 本書では、H+、やNa+、K+、などを輸送するイオンポンプや糖、アミノ酸、ATP、薬剤などの有機分子のトランスポーターに関して、それらの分子実体、輸送反応の構造に基づいた分子機構、調節機構や他の因子との相互作用などについて紹介し、研究の歴史的背景や今後の展望について概説する。 |