クマは眠れない

前表紙
東京新聞出版局, 2008/07/11 - 238 ページ
ハンターらに囲まれた母子グマ。母グマは泣き叫ぶ小グマを守るように、そして最後の愛情を与えるかのように体をなめはじめた。そのとき銃弾が彼女の眉間を貫いた……。里山への出没が増えたツキノワグマ。駆除という殺処分をマニュアル化して推し進める行政。2006年の駆除数は、明らかにされただけでも4,000頭以上にのぼる。
「クマはゴミじゃない」。ツキノワグマ研究の第一人者が、クマの異常行動の謎を解き明かし、人間と野生動物の共生の道を訴える渾身の書き下ろし。

クマは眠る。
北域の白雪は紺碧の森を隠し、冷艶な樹海の深みにクマは眠る。
しかし今、クマが安らかに眠れない時代が到来した。

学生時代、故郷青森の果樹園で目撃したハンターによる無残なクマの射殺場面に遭遇し、著者・米田一彦はその人生をクマの調査・研究に捧げる決意を固めた。
以来40年、時には越冬中の母子グマの姿を追い求めて厳冬の山を彷徨し、あるいは捕獲されたクマの射殺現場に立ち会いながら、このいたいけな野生動物と人間とが共生できる方策を模索し続けてきた。行政の無為無策による大規模駆除に対して痛烈な批判を展開する一方、絶滅の危機に瀕しているクマの世界に忍び寄る、新たな要因がもたらす異常行動の謎を解き明かしていく。
本書は、「異端の肖像」米田一彦がその壮絶な生き様を通じて、クマの知られざる生態に迫った渾身の書き下ろし作品である。

著者について (2008)

●著者紹介
米田一彦(まいた かずひこ)
1948年青森県生まれ。秋田大学教育学部卒業。秋田県庁で鳥獣保護行政を担当し、86年退職。90年西中国地方のクマ保全を目指し、広島県吉和村(現廿日市市)に転居する。91年日本で初めて奥山放獣を手がけ、97年以降は韓国と中国でも保全事業に取り組む。現在、特定非営利活動法人・日本ツキノワグマ研究所理事長。著書に『生かして防ぐクマの害』(農山漁村文化協会)、『クマを追う』(丸善出版)ほか多数。

書誌情報