午後の人々

前表紙
水声社, 1999 - 292 ページ
本書に描かれる世界はもはや機能不全に陥った世界である。それを支配するルールは、主人公を望ましいパートナーと結びつける力をすでに失っている。小説の後半、舞台は海辺に移り、そこでプリングルの自殺事件が起こったりもするのだが、死という問題さえもこの腐臭の漂いはじめた世界を破ってはくれない。悲劇はありえず、アトウォーターもスーザンもハリエットもバーロウもソフィもプリングルも、機能不全の社交喜劇の登場人物でしかありえない。一次大戦が終わり、永遠の繁栄を約束されるかに見えた「ジャズ・エイジ」アメリカがひっくり返ってしまった大恐慌の初期の時代に書かれたポウエルのデビュー作。

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