次の日には、発ってそれきり帰ってこない相手と知って いるせいか、子供の目から眺めても酒を飲みながらなのに いつになく陰気な様子だった。 その内に突然克己が、 といった。親父たちの方が驚いて、たしなめるというよ さらっといった。 親父は相手の父親の気持ちを計るようにしていったと思 彼は言い、もう誰も何も言わなかった。 そして、克己はそれから一月ほどして第何次でしたかの 1 ってみんな次々に射ち落とされてしまう。既めていて胸が 学校でその話をしたら、映画の他に娯楽のなかった頃だ あの教師もそんな時代におもねっていったんでしょう 教師は嫌な顔をした。一寸の間教壇の上に棒立ちになっ てくれて強制転校になった。しかし、それで弾みがついた 最後の高校を退学になるまで、学生のくせにあちこち流 生まれつきの性格もあったのでしょうが、どの学校へい 刑務所にいってからがつがつと手当たりに本を読みまし しまったような気分 れて両手で包むようにして態ってみたが、その頃かぞっと 一人娘だったし親からも頼まれて、短い葬式の後火葬場 そんな自分をとりもどそうとして、日を凝らして眺めれ 私が当時の建設大臣川俣興三の新築したての豪邸を焼き 払ったのも、しょせんあの男が目に障りすぎたからです。 後に金権で天下を奪った田中角栄なんぞあのリに比べれ 身元の知れぬ私を建物の外まで引きずり出した後、男た ちはどうしたらいいものか思案ぎみだった。兄貴株らしい 男が他に連れのいそうにない私を眺めなおし、どこから来 たと質し、私はただ当たり前の市民だと名乗り、川俣がい っていることが嘘だから嘘つきといったまでだというと、 お前はこの町であの人に盾をついたらどうなるのかを知ら ないのかといった。 「どうなるんだ」と聞いたら、その瞬間囲んでいた奴らが いきなり横から蹴とばし後ろから殴りつけて逆らう暇もな く私を倒すと、手慣れたもので手を出した連中はそのまま 車に乗り込んであっという間に会場から姿を消してしまっ た。 決してその遺恨なぞではなしに、しかしそれがきっかけ になり本気になってあの男のことを調べてみると、驚くほ どというより馬鹿馬鹿しいくらい他人を、要するに国民を 無視して目茶苦茶なことをやっている。それが衆知のこと なのに不思議に周りの誰もなにもいおうとはしない。その 頃はまだいた、やくざ者じゃなしにいわば本業の右翼の連 中も、彼等も含めて世間の側にいる連中を金と暴力で束 れていた有名な男が川俣の息がかりということでどうにも 動かない。 私だって自分の身は可愛いから、そんな事情を知ればこ とを斜めに眺めて過ごした方がましかと思いもしたが、最 |