新潮, 第 89 巻新潮社, 1992 |
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384 ページ
... なかにあるからこそ、その生の営みが健気に、いじらしく、みちのくみちのく陸奥にきたのも、思えば、この遠い北国の風のなかに、こうした寂寥の声を聞くためではなかったか。だが、ここでは、風よりも、月の光のなかに、心に滲みる深い哀愁がこもっていた ...
... なかにあるからこそ、その生の営みが健気に、いじらしく、みちのくみちのく陸奥にきたのも、思えば、この遠い北国の風のなかに、こうした寂寥の声を聞くためではなかったか。だが、ここでは、風よりも、月の光のなかに、心に滲みる深い哀愁がこもっていた ...
131 ページ
... なかで誰かが大声で言う。タルヤもまた飛び出す。客の全員が後に従う。氷と水で輝く舗道の真んなかで男とタルヤがつるつる滑って身を転がしている。ふたりとも相手と組み合おうとすると足元をとられ、男のほうはついに手にしていた空の丼を転んだ拍子に ...
... なかで誰かが大声で言う。タルヤもまた飛び出す。客の全員が後に従う。氷と水で輝く舗道の真んなかで男とタルヤがつるつる滑って身を転がしている。ふたりとも相手と組み合おうとすると足元をとられ、男のほうはついに手にしていた空の丼を転んだ拍子に ...
300 ページ
... なかで悲嘆の思いを忘れようと思ったことは間違いなかった。だが、そのことについては、西行も語ろうとしなければ、私もあえて訊ねようとはしなかった。たまたま会うことができると、ただ黙って庵のなかで対座し、ひたすら時雨が屋根を漏らすかぼそい音を ...
... なかで悲嘆の思いを忘れようと思ったことは間違いなかった。だが、そのことについては、西行も語ろうとしなければ、私もあえて訊ねようとはしなかった。たまたま会うことができると、ただ黙って庵のなかで対座し、ひたすら時雨が屋根を漏らすかぼそい音を ...
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多く使われている語句
アカナメ あっ あと あの あり いい いた いっ いま うち オッコ かもしれ カラコルム かれ ギルギット くる くれ ここ させ しか しまう しまっ じゃ しょう そう そういう そこ それは そんな たい だが だから だけ ただ たち だっ たと たら たり たん てき でも てる という とか とき ところ とも なか なかっ ながら なっ など なの なら なり なる なん にし のか ハラウェイ フォークナー ヘミングウェイ ぼく ほど マーラー まし ます また まで もう モーツァルト よく より られ られる ろう わけ わたし われ んで 感じ 丸山ワクチン 旧約聖書 言う 言っ 言葉 考え 行っ 作家 作品 姉さん 子供 思い 思う 思っ 持っ 時間 自分 小説 消費税 新潮社 人間 世界 大谷さん 定価 東京都 同じ 日本 病院 部屋 文学 妖怪 立原正秋 鬱病