その娘も結婚し、昨年には孫を産んだ。だが、そんなこ とはこの話とは無関係のことだ。 羽根木公園が根津山の跡であることだけではなく、それ しかし、私はその中に一歩もはいったことがない。兄に それにしても、初めはそれと気づかずに自分の家を作っ (了) 付記。 この短篇は「新潮」昭和六十三年五月号に載せた「神 河内」につづく連作となるものです。 募集 要 対象/自作未発表のファンタジー小説(日本語で書かれたもの)。 応募資格/プロ、アマ不問 を添付してください。(ワープロ原稿も可) 賞と賞品/大賞(1点).......賞金500万円(および記念品) を各250万円とします。 原稿送付先/〒162 東京都新宿区矢来町 内「日本ファンタジーノベル大賞」係 選考委員/荒俣 宏(作家)、安野光雅(画家・絵本作家)、 澄子(作家・詩人)〈50音順> 出版/大賞受賞作品は新潮社より単行本として刊行されます。 精権利/受賞作品の著作権および、これから派生する全ての権利 者に帰属します。 その他/受賞作品の、他の文学賞への応募は認めません。応募原稿 FANTASY NOVEL わたくし 今年の夏は、私は七年ぶりに狂人の父に逢いに行った。その時、母から「去 宏之叔父は昭和三十二年五月二十二日の午前、古い納屋の梁に粗細を掛けて は人間のもっとも深い精神の部分だ。」という言葉が記されていたが、その 紙を投函していたポストは円筒型であったから、どこか町 母の実家は村の中辻の角にあった。だから郵便ポストが 曾祖父の勇吉は神戸長田の運河沿いの貧民窟に生れ、尋 一年後に私が生れ、母は肥立ちが悪かったから、同じ村内 ひよどりごえ かなつけまなこ けをした。下ノ関へ李鴻章が来たと言って日本国中が騒い 私が物心ついた時分の勇吉は、すでに七十を越え、鍛冶 併し私は母の里へよく行った。昼間は祖母が納屋の出口 に足踏式の縄編機を据えて、組縄をあざなうてい たから、 |