新潮, 第 89 巻、第 1〜3 号 |
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8 ページ
la すべてなごやかで、ああ、今日のこの陽がいつまでも小栗栖の背山に落ちない
でいてくれればありがたいものを、と願いつつ、男女はいつまでも花に戯れ、水
に心を澄まして楽しんでいたという。常にないことであった、と聞庵はいくらか
...
la すべてなごやかで、ああ、今日のこの陽がいつまでも小栗栖の背山に落ちない
でいてくれればありがたいものを、と願いつつ、男女はいつまでも花に戯れ、水
に心を澄まして楽しんでいたという。常にないことであった、と聞庵はいくらか
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10 ページ
は「猪首」といって、顔が左右に回らない人もいた。年齢もまちまち、背丈の
低いものや、高い者やがいて、みな病人相であった。だが、そんなよせあつめの
人間でも、馬卒はつとまったというか。食糧や弾丸はこびは戦争には欠かせない
こと ...
は「猪首」といって、顔が左右に回らない人もいた。年齢もまちまち、背丈の
低いものや、高い者やがいて、みな病人相であった。だが、そんなよせあつめの
人間でも、馬卒はつとまったというか。食糧や弾丸はこびは戦争には欠かせない
こと ...
11 ページ
だぶきのそり使の屋根で、大きな菊の章を章りこんだ厚 S 扉板の開しられた門の
前であった。その手前に長い木枠にはめこまれた柵がある。中央はえぐれた石畳
で、丸瓦をふいた土塀が、鳥が羽根をひろげたようにかたちよくつき出て、一方
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だぶきのそり使の屋根で、大きな菊の章を章りこんだ厚 S 扉板の開しられた門の
前であった。その手前に長い木枠にはめこまれた柵がある。中央はえぐれた石畳
で、丸瓦をふいた土塀が、鳥が羽根をひろげたようにかたちよくつき出て、一方
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14 ページ
狂馬「敷島」も怪我がひどかったので獣医部にまわされて手当てをうけている
そうだった。両方ともが生きていたことで、私らはほっとした。といった。神岡
が泥んこになって仰向けになりながらも、持ち馬の手綱を放さずにいた行為を
古兵は ...
狂馬「敷島」も怪我がひどかったので獣医部にまわされて手当てをうけている
そうだった。両方ともが生きていたことで、私らはほっとした。といった。神岡
が泥んこになって仰向けになりながらも、持ち馬の手綱を放さずにいた行為を
古兵は ...
17 ページ
むろん家内が東京の病院でダビングしてもらっていたカテーテル手術のフィルム
も手渡して、これをよく所見されての結果であったろう。小水も一日一五〇〇cC
を出すよう義務づけられ、目もりづきの尿瓶を手渡された。薬は多少東京のとは
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むろん家内が東京の病院でダビングしてもらっていたカテーテル手術のフィルム
も手渡して、これをよく所見されての結果であったろう。小水も一日一五〇〇cC
を出すよう義務づけられ、目もりづきの尿瓶を手渡された。薬は多少東京のとは
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