新潮, 第 89 巻、第 1〜3 号 |
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だが、私たちも二頭の馬をひいているのだから、中間の災難にかかずらう余裕はないのだった。「敷島」は、栗毛の発琶股を輝かせ、肉づきのよい尻を大きく左右にふり、頭を垂直にして空に向ってひひーんとないた。そうして、二つの輪の車輛もろとも早苗の ...
だが、私たちも二頭の馬をひいているのだから、中間の災難にかかずらう余裕はないのだった。「敷島」は、栗毛の発琶股を輝かせ、肉づきのよい尻を大きく左右にふり、頭を垂直にして空に向ってひひーんとないた。そうして、二つの輪の車輛もろとも早苗の ...
14 ページ
四月から六月まで、約三·ヵ月飼育して、調練も終えた馬たちだったが、いまはもう印象薄くて、顔だちもしっかりおぼえていない。五十年の歳月というものだろう。重輸卒という名称もそうだけれど、特務兵というにしても、馬の尻掃除ばかりしてきた兵科 ...
四月から六月まで、約三·ヵ月飼育して、調練も終えた馬たちだったが、いまはもう印象薄くて、顔だちもしっかりおぼえていない。五十年の歳月というものだろう。重輸卒という名称もそうだけれど、特務兵というにしても、馬の尻掃除ばかりしてきた兵科 ...
19 ページ
もう成山から山、火山に葺き屋根の農家もありはしないかけて、紅葉に雑木が、黄金いろだったり、真っ赤だったりして、杉や檜の植林地帯をところどころ線をひいて隈どったようにみせて、朝はかすみ、夕刻は西陽をうけて位いろにけむっていた。
もう成山から山、火山に葺き屋根の農家もありはしないかけて、紅葉に雑木が、黄金いろだったり、真っ赤だったりして、杉や檜の植林地帯をところどころ線をひいて隈どったようにみせて、朝はかすみ、夕刻は西陽をうけて位いろにけむっていた。
21 ページ
小造りな顔だけれど、亡くなった父親が、土佐の四万十川の上流にある河辺村の出身だということだった。そんな遠い山国に生れた人の血につながって、美貌とはいわないまでも、ひっこんだ目がきりっとしまっていた。頬骨の張った顔だちもどこか律儀で健康 ...
小造りな顔だけれど、亡くなった父親が、土佐の四万十川の上流にある河辺村の出身だということだった。そんな遠い山国に生れた人の血につながって、美貌とはいわないまでも、ひっこんだ目がきりっとしまっていた。頬骨の張った顔だちもどこか律儀で健康 ...
23 ページ
私はその柿の下へいって、山根さんが待ちどおしがるほど木を撫でて、このあたりで、たぶん馬の小休止だったかもしれぬ、と思った。小休止は馬に水をやるだけだった。たぶん、農家の裏木戸をあけてポンプ井戸をみつけて、走りこんでをのぼりつめると、安芸 ...
私はその柿の下へいって、山根さんが待ちどおしがるほど木を撫でて、このあたりで、たぶん馬の小休止だったかもしれぬ、と思った。小休止は馬に水をやるだけだった。たぶん、農家の裏木戸をあけてポンプ井戸をみつけて、走りこんでをのぼりつめると、安芸 ...
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