新潮, 第 89 巻、第 1〜3 号 |
この書籍内から
検索結果1-5 / 100
13 ページ
そうして、二つの輪の車輛もろとも早苗のぎっしり植わった田へ入れて、苗をなぎ倒しながら先へつき進むのだった。「あほんだらッ」伊勢出身の上等兵が怒った。さらにそのうしろで「馬鹿者」とか、「気をつけいッ」「阿呆ッ」と軍曹や伍長の叫ぶ声がした。
そうして、二つの輪の車輛もろとも早苗のぎっしり植わった田へ入れて、苗をなぎ倒しながら先へつき進むのだった。「あほんだらッ」伊勢出身の上等兵が怒った。さらにそのうしろで「馬鹿者」とか、「気をつけいッ」「阿呆ッ」と軍曹や伍長の叫ぶ声がした。
14 ページ
両馬とも盛は黒かった。琵琶股もよくもりあがってびかぴか光っていた。尾も黒かった。いわゆる今日の競馬馬のようなスマートさはなかったけれど、腹はゆったりさがって、前肢のつけ根のくびれもそんなに細くなかった気がする。四月から六月まで、約三· ...
両馬とも盛は黒かった。琵琶股もよくもりあがってびかぴか光っていた。尾も黒かった。いわゆる今日の競馬馬のようなスマートさはなかったけれど、腹はゆったりさがって、前肢のつけ根のくびれもそんなに細くなかった気がする。四月から六月まで、約三· ...
16 ページ
身内もかかわっている病院なら、多少なりとも安心だった。東京の病院もむろん不足はなく、主治医も看護婦さんもやさしくしてくれたのだけれども、私には薬の副作用と思われる全身サボテンになったような、脇や股の皮のうすい箇所に、竹のソゲがたつみたい ...
身内もかかわっている病院なら、多少なりとも安心だった。東京の病院もむろん不足はなく、主治医も看護婦さんもやさしくしてくれたのだけれども、私には薬の副作用と思われる全身サボテンになったような、脇や股の皮のうすい箇所に、竹のソゲがたつみたい ...
23 ページ
... の「敷島」にひきずられて、車輛もろとも泥んこで小さくなったのはこの炎本舗の真下だったろうか。とすれば、山科川の土堤のあたりである。神岡と狂馬は土堤にきて立往生したものか、それとも村につき当たって誰かに助けてもらったか。
... の「敷島」にひきずられて、車輛もろとも泥んこで小さくなったのはこの炎本舗の真下だったろうか。とすれば、山科川の土堤のあたりである。神岡と狂馬は土堤にきて立往生したものか、それとも村につき当たって誰かに助けてもらったか。
25 ページ
そこにトドさんと住んでますねや」といつまでも、桜の下に立っている私を、山根さんはいくらかせかせて、寒くなるから早く帰路につくようにというのだっろともひきずられて泣き叫んでいた狂馬を持ち馬とした二等兵の顔があるだけだ。
そこにトドさんと住んでますねや」といつまでも、桜の下に立っている私を、山根さんはいくらかせかせて、寒くなるから早く帰路につくようにというのだっろともひきずられて泣き叫んでいた狂馬を持ち馬とした二等兵の顔があるだけだ。
レビュー - レビューを書く
レビューが見つかりませんでした。
他の版 - すべて表示
多く使われている語句
あっ あと あの あり いい いた いっ いま うか うち かもしれ かれ くる くれ ここ させ さん しか しまう しまっ じゃ しょう すると そう そういう そこ それは そんな たい だが だから だけ ただ たち だっ たと たら たり だろ たん てき でも という とか とき ところ とも なか なかっ ながら なっ など なの なら なり なる なん にし のか ほど まし ます ませ また まで まま もう よく より られ られる れる ろう わけ わたし われ 感じ 見る 言う 言っ 言葉 考え 行っ 作家 作品 子供 思い 思う 思っ 持っ 時間 自分 小説 人間 世界 同じ 日本 病院 部屋 文学