新潮, 第 89 巻、第 1〜3 号 |
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8 ページ
七年の夜雨を忘れる」の意味がいまよく私にはわからないけれど、雑木のなかに
桜だけが白く浮いている山の景色はよく表現されているように思う。石橋の左側
にはものさびた堂があって、増田少将がにわか茶屋をしつらえて待っていて、
秀吉 ...
七年の夜雨を忘れる」の意味がいまよく私にはわからないけれど、雑木のなかに
桜だけが白く浮いている山の景色はよく表現されているように思う。石橋の左側
にはものさびた堂があって、増田少将がにわか茶屋をしつらえて待っていて、
秀吉 ...
11 ページ
中央はえぐれた石畳で、丸瓦をふいた土塀が、鳥が羽根をひろげたようにかたち
よくつき出て、一方は三宝院の入口へ、一方は五重塔の方へ、長くのびていた。
その反対側、つまり私の馬をつないでいる側にも土塀があって、桜樹は、三間
ほど ...
中央はえぐれた石畳で、丸瓦をふいた土塀が、鳥が羽根をひろげたようにかたち
よくつき出て、一方は三宝院の入口へ、一方は五重塔の方へ、長くのびていた。
その反対側、つまり私の馬をつないでいる側にも土塀があって、桜樹は、三間
ほど ...
14 ページ
琵琶股もよくもりあがってびかぴか光っていた。尾も黒かった。いわゆる今日の
競馬馬のようなスマートさはなかったけれど、腹はゆったりさがって、前肢の
つけ根のくびれもそんなに細くなかった気がする。四月から六月まで、約三·ヵ月
...
琵琶股もよくもりあがってびかぴか光っていた。尾も黒かった。いわゆる今日の
競馬馬のようなスマートさはなかったけれど、腹はゆったりさがって、前肢の
つけ根のくびれもそんなに細くなかった気がする。四月から六月まで、約三·ヵ月
...
15 ページ
長い鼻づらでもあるから時どきぶーふーと黒い鼻腔から息を吐いて眼をほそめ、
よくしゃべるのである。私はかなり長い時間を、「照銀」とその日は話したと
思う。馬はそれからちょくちょくくるようになった。私は導眠剤を呑んで眠る
くせが ...
長い鼻づらでもあるから時どきぶーふーと黒い鼻腔から息を吐いて眼をほそめ、
よくしゃべるのである。私はかなり長い時間を、「照銀」とその日は話したと
思う。馬はそれからちょくちょくくるようになった。私は導眠剤を呑んで眠る
くせが ...
17 ページ
それでなろうことなら十階の私の部屋をゆずってもらえまいか、と家族が願って
おられる、というのだった。私のほうは主治医のはなしだともう心臓は殆どよく
なっていて、医者も安心している。注意すべきは薬害の方で、少しずつ薬の量を
...
それでなろうことなら十階の私の部屋をゆずってもらえまいか、と家族が願って
おられる、というのだった。私のほうは主治医のはなしだともう心臓は殆どよく
なっていて、医者も安心している。注意すべきは薬害の方で、少しずつ薬の量を
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