新潮, 第 89 巻、第 4〜6 号 |
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85 ページ
それなのに、あのとき俊之が真っ先に考えたのは芳佳をこの場から立ち去らせ
なくては、ということだった。なぜなのか、なぜ自分が、芳佳を泣き出させて
しまうほどに激しい口調になってまでそうしようとしたのか、ということを、
俊之は ...
それなのに、あのとき俊之が真っ先に考えたのは芳佳をこの場から立ち去らせ
なくては、ということだった。なぜなのか、なぜ自分が、芳佳を泣き出させて
しまうほどに激しい口調になってまでそうしようとしたのか、ということを、
俊之は ...
88 ページ
俊之はスヌーピーの電話機を見つめながら、芳佳にはじめて電話したときのこと
を思い出していた。つまり、はじめて会って電話番号を聞き出した翌日、
ドライブに誘ったときのことである。|新井がとうとう落ち着いたらしいぞ。高校
の ...
俊之はスヌーピーの電話機を見つめながら、芳佳にはじめて電話したときのこと
を思い出していた。つまり、はじめて会って電話番号を聞き出した翌日、
ドライブに誘ったときのことである。|新井がとうとう落ち着いたらしいぞ。高校
の ...
90 ページ
戸籍の名は韓国名だが、それでは S ろいろ不便なので名簿などでは通名を使わせ
てもらう必要があった。小学校と中学校のときは母が学校まで来てその手続きを
してくれたが、高校のときは俊之が自分で学事担当の教師に言い、事務室に行っ
...
戸籍の名は韓国名だが、それでは S ろいろ不便なので名簿などでは通名を使わせ
てもらう必要があった。小学校と中学校のときは母が学校まで来てその手続きを
してくれたが、高校のときは俊之が自分で学事担当の教師に言い、事務室に行っ
...
103 ページ
麻雀は午前四時まで続いた。俊之がひとりで浮き、眠さにふらつく足で家に帰っ
たときは財布の中身が二万円ほど増えていた。階下でバタバタと人の動く気配が
して、俊之は目を覚ました。カーテン越しに部屋の中に射しこんでいる光は、 ...
麻雀は午前四時まで続いた。俊之がひとりで浮き、眠さにふらつく足で家に帰っ
たときは財布の中身が二万円ほど増えていた。階下でバタバタと人の動く気配が
して、俊之は目を覚ました。カーテン越しに部屋の中に射しこんでいる光は、 ...
108 ページ
在日韓国人が外国に行ったときに体験しなければならないその類いの話は、俊之
も何度か耳にしたことがあった。「ずっと日本に住んでたから、韓国語は話せ
ないんだって、俺がその当時のつたない英語で説明してもさ、何度も何度も『 ...
在日韓国人が外国に行ったときに体験しなければならないその類いの話は、俊之
も何度か耳にしたことがあった。「ずっと日本に住んでたから、韓国語は話せ
ないんだって、俺がその当時のつたない英語で説明してもさ、何度も何度も『 ...
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