新潮, 第 89 巻、第 4〜6 号 |
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75 ページ
そうする前になんとなく疲れてしまって、いつも結局は腑抜けた声を出しながら
ゴロゴロして、激しい感情が自分から去ってゆくのを待つ。「ホントにもーやー
」力ない声でもう一度呟くと、俊之は目をつぶった。追突事故を起こしてしまっ
た ...
そうする前になんとなく疲れてしまって、いつも結局は腑抜けた声を出しながら
ゴロゴロして、激しい感情が自分から去ってゆくのを待つ。「ホントにもーやー
」力ない声でもう一度呟くと、俊之は目をつぶった。追突事故を起こしてしまっ
た ...
80 ページ
行けっつってんだろッ」自分でもギョッとしたくらいの激しい大声だった。
もともと目をうるませていた芳佳が、そのひと言でついに涙を流した。運転席側
の窓ガラスを、警官の指がトントンと叩いた。隣りで芳佳がしゃっくりのような
音を ...
行けっつってんだろッ」自分でもギョッとしたくらいの激しい大声だった。
もともと目をうるませていた芳佳が、そのひと言でついに涙を流した。運転席側
の窓ガラスを、警官の指がトントンと叩いた。隣りで芳佳がしゃっくりのような
音を ...
85 ページ
ただ、本人はそれが自分の名前だと思っている「通名」をずっと使ってきたし、
なんとなくそういうことになってしまっていたと言うより他ない。だから
ほとんどの友だちは誰も俊之が韓国人であることを知らないけれど、
だからといって、 ...
ただ、本人はそれが自分の名前だと思っている「通名」をずっと使ってきたし、
なんとなくそういうことになってしまっていたと言うより他ない。だから
ほとんどの友だちは誰も俊之が韓国人であることを知らないけれど、
だからといって、 ...
89 ページ
自分の家が韓国人家庭なのだと――そういう正確なことばではなくても、よそと
は違う「事情」があるらしいということを、ぼんやり意識しはじめたのはいつの
ころだったろうか。はじめての指紋押捺よりずっと前のことのように思う。それ
を ...
自分の家が韓国人家庭なのだと――そういう正確なことばではなくても、よそと
は違う「事情」があるらしいということを、ぼんやり意識しはじめたのはいつの
ころだったろうか。はじめての指紋押捺よりずっと前のことのように思う。それ
を ...
90 ページ
戸籍の名は韓国名だが、それでは S ろいろ不便なので名簿などでは通名を使わせ
てもらう必要があった。小学校と中学校のときは母が学校まで来てその手続きを
してくれたが、高校のときは俊之が自分で学事担当の教師に言い、事務室に行っ
...
戸籍の名は韓国名だが、それでは S ろいろ不便なので名簿などでは通名を使わせ
てもらう必要があった。小学校と中学校のときは母が学校まで来てその手続きを
してくれたが、高校のときは俊之が自分で学事担当の教師に言い、事務室に行っ
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