胃弱・癇癪・夏目漱石: 持病で読み解く文士の生涯講談社, 2018 - 317 ページ 人間嫌いの厭世病。人の心の深い闇を描いた夏目漱石は、多病持ちだった。疱瘡、眼病、強度の神経衰弱、糖尿病、結核への恐怖、胃潰瘍......。次々襲う病魔と、文豪はいかに闘ったのか。医師との付き合い方、その診療にミスはなかったのか。そして病は、彼の生み出した文学にどんな影響を与えたのかーー。ままならない人生に抗い、嫉妬し、怒り、書き続けた49年。その生涯を、「病」をキーワードに読み解く! 人間嫌いの厭世病。人の心の深い闇を描いた夏目漱石は、多病持ちだった。 疱瘡、眼病、強度の神経衰弱、糖尿病、結核への恐怖、胃潰瘍......。 次々襲う病魔と、文豪はいかに闘ったのか。 医師との付き合い方にミスはなかったのか。 診察の中身は、本当の死因は何だったのか。 そして病は、彼の生み出した文学にどんな影響を与えたのかーー。 ままならない人生に抗い、嫉妬し、怒り、書き続けた49年。 作品、書簡、家族、知人の証言や、当時のカルテを掘り起こし、 その生涯を、「病」という切り口から読み解く! 内容 はじめにミザンスロピック病 第一章変人医者が生きかたのお手本 第二章円覚寺参禅をめぐって 第三章左利きの文人 第四章朝日入社前後 第五章新聞文士 第六章神経衰弱の実相 第七章胃が悲鳴をあげている 第八章森田療法と漱石 第九章修善寺の大患 第十章急逝の裏に むすびに原稿用紙上の死 本文より) 漱石は頭を掻きむしるようにして、「頭がどうかしている。水をかけてくれ、水をかけてくれ」と唸るようにせきたてた。/見ると、夫は白目を剥いて、尋常ではない。/夫人は、ともかく水をと思い、そばのヤカンから水を口に含んでは口移しに水を与え、そして、漱石の求めに応じて、「貴方、しっかりしなさいよ、しっかりしなさいよ」と言いながら、ヤカンの水を植木鉢に水をやるように、夫の頭に勢いよくかけたのだった。「ああ、いい気持だ。ほんとうにいい気持だ」(「第十章」より) |